今年も、あの日が近付いてくる。
自分の誕生日が。
だが、実際の誕生日など、リオウは知る筈も無かった。
何故なら、彼は捨て子だったのだから。
自分が、一族に拾われた日。
それが、リオウの誕生日になった...。
正直、誕生日に何の意味があるのかと思う。
ただ、生まれた日。
それだけの事だと、リオウは思っていた。
そこに、何の特別の意味があるのか。
それとも、自分の本当の誕生日を知る事が出来たなら、
その意味がわかるのだろうか。
そして、今年も迎えた、その日に。
今迄とは違う、リオウに初めて贈られた、暖かいもの。
「リオウ、誕生日、おめでとう!あまり、リオウみたく上手には焼けなかったのだけれど...」
そう言って、照れた様に笑う、リオウの想い人から、渡されたのは、
少しだけ焼き色の濃い、手作りのクッキー。
包みを差し出した細い指のあちこちに巻かれた、白い包帯。
思わず、リオウの胸が、詰まった。
「リオウが生まれてくれて...私と出会ってくれて、有難う。それがとても嬉しいから、リオウが生まれた日に、感謝したいの」
リオウへと向けられる、優しい微笑み。
自分がこの世に生を受けた事を、感謝される。
それが、こんなにも嬉しい事だと、初めて知った。
初めて知る、誕生日の意味。
例え、偽りの誕生日でも。
この世界で一番愛しい人に、認めてもらえたなら、
それこそが真実になるのだから。
「有難う御座います、姫...」
そして、ここから、何かが...始まる。